柴犬が噛むのは薬で治るのか?しつけに薬を使った飼い主の悲劇
我が家の柴犬の本気噛みに悩まされて数カ月、藁にもすがる思いで試したのが薬物療法です。
しつけに薬を使うことは悪いことではありませんが、その本質を飼い主が理解できるまで説明してくれるトレーナーさんや獣医さんの指示のもとでやらなければ意味がありません。
私は、薬を飲ませることで穏やかになった麦を見て肝心なしつけ(行動療法)の部分をおざなりにしてしまいました。
あくまでもしつけの補助として使う薬を、犬が噛むことが治る魔法の薬だと勘違いしていました。
冷静に考えればそんなはずないのに…
この記事は薬物療法の本質を理解できていなかった飼い主の悲劇と反省の体験談です。
目次
薬物療法を試すようになったきっかけ
自我が芽生えてくる言われている生後7か月頃を境に、いきなり噛まれることが多くなりました。
噛まれるタイミングは様々。
意思表示のために噛みついてくることもあれば、特にこちらがアクションを起こさなくても襲い掛かるように噛みついてくることもありました。
犬が人間を噛む。
私にとってはあまりにも無縁なことだったので、その意味なんて考えたことがありませんでした。
麦の場合は自分の意思表示として噛む場合と、本能?と思うほどこちらが何もしていなくても噛む場合があります。
どちらの場合も気が狂ったように興奮していて自分の感情がコントロールできていないような感じです。
意思表示の場合
- 首輪を付けられるのが嫌だ
- ブラッシングをされるのが嫌だ
- 膝の上から降ろされるのが嫌だ
など。
何もしてない場合
- 横を通る
- スマホを触る
- 視界にいきなり入る
など。
初めての経験だったのでどうしたらいいのかが分からず、戸惑っているうちに時間だけが過ぎていきました。
とにかく手が付けられない…しつけの出口が見えない…
トレーナーさんに相談してもそんな状況が続き、噛む強さはどんどんエスカレートしていきました。
この頃は、とにかくネットで噛む犬について検索する毎日。
柴犬 噛む
柴犬 本気噛み
柴犬 怒る
柴犬 狂暴
etc…
何か手掛かりはないか、何か良い方法はないか、同じような子はいないか。
ブログやホームページを読み漁っていました…
私の中での柴犬はおだやかで大人しいイメージでしたが、ネットで調べて知った柴犬の生態というのはずいぶん違いました。
そして、同じように噛む犬のしつけに悩んでいる方がとても多いことを知りました。
そんな中、柴犬が噛むのは単純にしつけの問題だけではないという記事を書いている獣医さんのサイトにたどり着きました。
柴犬の攻撃行動に対して様々な対応策が書いてあり、その一つに薬物療法がありました。
犬のしつけに薬を使うというとあまり良いイメージはありませんが、この頃は噛む強さも噛まれる頻度もかなり上がっていました…
獣医さんがやっているしつけ教室ということもあり、専門的な知識や経験から麦のことを診てもらえるんじゃないかと思い、カウンセリングの予約を取りました。
これが薬物療法をはじめたきっかけです。
柴犬は噛む子が多い!?
柴犬の性格を調べていると、頑固、気難しい、神経質、べたべたされるのが嫌い、警戒心が強いなんてことが書いてあります。
飼い主に従順で忠誠心が強い、その反面、しつけに失敗すると大打撃…手が付けられない犬種。
(全然知らなかった…)
オオカミが起源の柴犬は野性味が強くチワワやトイプードルのような愛玩犬とは接し方が違うんですね。
膝の上に抱いて触ったり一緒に寝たり、今まで先代犬が喜んでいたことが麦にとってはすごくストレスだったみたいです。
そして、食べ物を前にするとやけに攻撃的になるし、ぐっすり眠っているかと思いきや横をとおるとパチッと目を開けて警戒心丸出しになります。
麦の性格や柴犬の気質を理解していなかった我が家は、麦に合わせたしつけをしてあげることができず、見事な問題行動犬に成長させてしまいました。
噛まれても噛まれても、こんなに可愛がっているんだから「そのうち噛まなくなる」最初の頃は本気でそう信じていました。
色んなトレーナーさんや獣医さんに相談すると、
「柴犬は難しいですからね」
「柴犬はね~」
「多いんですよー」
どの方にも同じようなことを言われました。
テレビで見る柴犬のイメージはおっとりして穏やかな犬種…”(-“”-)”
自分がもっている柴犬のイメージとトレーナーさんや獣医さんが言う柴犬のイメージがずいぶん違うことにおどろきました。
専門家の皆さんが言うんだから、やっぱり他の犬種よりもちょっと気難しく、しつけには気合がいるということは間違いないですね。
しつけの相談をしているときに聞いた話によると、柴犬にはだいたい3割~4割くらいはこういった子がいるということでした。
多い…
犬を飼ったらとりあえずしつけ教室。
大型犬や特殊な犬種なら当たり前なのかもしれませんが、中型犬や小型犬、ましてやご近所にたくさんいるような人気犬種ならばどうでしょう。
この考えを持っている人って少ないんじゃないでしょうか。
日本犬、特に柴犬のしつけは難しい、私が相談した4人のトレーナーさんはみなさんそうおっしゃっていました。
「今日も朝から3件!噛む柴犬の所に行ってきました」とか…
ただ、犬に従事するお仕事しているトレーナーさんとは違い、一般の私たちの感覚では実際に一緒に暮らしてみて実感しない限り、わざわざお金を払って時間を割いてというのはなかなか難しいです…
トレーナーさんにも言われました。
「本当にどうにもできなくなって初めて相談にくる。」そんな人ばかりだと…
可愛いところばかりが伝えられている柴犬ですが、愛玩犬とは気質が違います。
チワワやトイプードルのような感覚で飼い始めて「こんなはずじゃなかった、手に負えない」と飼育放棄する方が後を絶たないそうです…
ちゃんとしつけないと噛みついたり攻撃的になる子がいるという事がもっともっと広まってくれることを願います。
噛む犬のしつけに薬を使うってどういうこと!?
犬のしつけはトレーナーさん、病気は獣医さん。
そんな風に思っていましたが、今は動物病院に問題行動専門の先生がいて、獣医さんが行う行動療法や薬物療法があります。
獣医さんによる行動療法というのは、人間とは違う本能や習性を持っている動物の行動特性に基づいて、問題行動への治療やアドバイスをしてくれるというものです。
そして、問題行動が単純にしつけの失敗によるものではなく、脳の問題や身体的疾患で引きおこされているのかどうかなど、医療的な観点からも診察してもらうことができるんです。
しつけや問題行動に薬を使う場合というのは、この治療的な原因とは違い、激しい攻撃性を持っていたり精神的に不安定な子を薬で少し落ち着けた状態にし、その間に飼い主との信頼関係をもてるようなしつけや生活を行いましょうというものです。
しつけや問題行動に薬を使うというのはただ単に薬を飲ませるのではなく、薬を飲ませて精神を安定させた状態にして、行動修正をしていくというものです。
薬物療法と行動療法(しつけの訓練みたいなものかな)、この二つを一緒に行ってはじめて効果がでるそうです。
私は薬を飲ませることで穏やかになった麦を見て、行動療法ほ行わずに満足してしまいました。
しかし、しつけに使われる薬は犬が噛むのを治したり問題行動を改善するものではないので(あたりまえか…)それだけでは全く意味がありませんでした。
麦が使っていたのはフルオキセチン10mg。
これは抗うつ薬の一種で、攻撃性がある犬や猫の行動修正に使われたり強迫性障害の治療に使われるものです。
しつけや問題行動に薬を使う意味を理解できていなかった飼い主の悲劇…
麦の本気噛みがひどくなるにつれて、ネットで色々調べる毎日。
攻撃性がある犬の病気として、てんかんや激怒症候群というのもネットで見ていたので、もしかしたらこういった病気なんじゃないかと考えたこともありました。
こんなにもひどく犬に噛まれたという経験がなかったので、この子はどこかおかしいんじゃないか、何かの病気なんじゃないかと思わずにはいられませんでした。
そんな中で見つけた柴犬のしつけに対する薬物療法。
まず、柴犬が噛むのは単純にしつけの問題だけではないと言っている獣医さんに会いに行き、カウンセリングを受けました。
獣医さんが運営されているしつけ教室です。
柴犬の噛み癖や攻撃性に詳しそうな先生を見つけて救われたような気持ちでした。
とりあえず初回カウンセリング。
先生に症状や今までの出来事をお話ししたところ、「柴犬にはよくあります」、「それは麦君にとってこういうことじゃないでしょうか」
色んなことをわかりやすく解説していただきました。
その答えはどれも納得できるものばかりで、問題行動や攻撃性による飼育放棄をなくすということで活動されている先生だったので、とても信頼できました。
薬を飲ませることに抵抗はありましたが、「副作用としてはボーっとして歩くときにフラフラしてしまうことがあるかもしれない」というくらいでした。
色々話を聞いた結果、
「てんかんという感じではないですね。こういう子にはよく合う薬だと思います。」
ということで、フルオキセチンという薬を処方してもらって飲ませることになりました。
とりあえず1週間分。
「飲ませて様子を見てみましょう。何かあったらすぐに連絡ください。」
こうして麦の薬物療法がはじまりました。
薬を飲ませてからの変化
フルオキセチン10mgを1日1回。
これでどれだけの変化があったかというと…
激変です!!
今まで、首輪やリードをされると怒る、触っていると怒る、寝ているときに近くを通ると怒る、食べ物を前にすると攻撃性が増す。
数えるときりがないのですが(>_<)
自分の思い通りにならなかったときや麦が嫌だと感じたとき、そして、食べ物を目の前にして興奮状態になって攻撃性が増したときに噛むということがありました。
それがピタっとなくなったんです。
夜、ぐっすり寝ているところに近づくとブチ切れるように吠えることもなくなりました。
さらに、パピーの頃から爪や手を噛むことが多かったのですが、これもピタっとなくなりました。
こんなにも変わるのか…
びっくりもしましたし、しばらく、麦の攻撃性におびえる日々が続いていたのでとにかく安心して暮らすことができました。
それは、久しぶりに訪れた犬との穏やかな生活。
1週間後、先生のもとを訪ねたときは、感謝の気持ちでいっぱいでした。
「びっくりするぐらい変わりました!!薬を試してみて良かったです!!」
効果がない子もいるようですが、麦にはよく効いていました。
さて、こうして穏やかな日々が送れるようになった我が家ですが…
この薬物療法、結果、麦には合いませんでした。
そして、私自身にも。
今は一切飲ませていません。
私は薬を飲ませることで噛むのが治る。
麦の攻撃性がおさまる。
そんな風に勘違いしてしまいました。
よく考えればそんなことあるはずないのに…
数か月後の変化について
薬を飲ませるようになってから、本当に穏やかな時間が過ごせました。
今まで当たり前だった犬との暮らしがこんなにも幸せなものだなんて…
涙が出るほど喜びました。
しかし、薬を飲ませるようになってから2か月ほど経った頃。
「あれ?前みたいな反応するようになってきてるよね…」
そんな会話を家族でするようになりました。
しばらくはおさまっていたのに…寝ている横を通ると怒るし、イライラしたように爪をガジガジ噛むことが増えていました。
先生に薬をもらいに行った際に相談したところ、
「神経質になりすぎてもよくありません。しばらく様子を見てみましょう」
悲劇がおこったのはその数日後です。
麦が家族をひどく噛んでしまいました。
その傷は目をそむけたくなるくらいのものでした。
近づくと唸る怒るで手が付けられない状態…
20時間以上も外に連れ出せませんでした。
そして、噛まれる覚悟で麦を捕獲して先生のもとに相談に行きました。
「薬なので飲み続けることで耐性がついてしまい効かなくなることはありますね。」
そんな…
それからの数日間はむぎも飼い主もピリピリ状態。
薬を飲ませるようになって穏やかになった麦。
その薬に慣れてしまった、そして反動でなのかさらにひどい状態になってしまったんです。
罪悪感でいっぱい…てんかん薬の使用
ピリついた状態になってから、数週間は先生のもとに何度も通いました。
麦と接するときもとにかく噛まれないようにと細心の注意をしました。
大好きな犬を触ることにこんな恐怖を感じる日が来るなんて…
これからどうやって接していけばいいのか。
散歩に連れ出すのも一苦労でした。
他にもこういった子に使う薬があるのか、そもそも、薬に対しても本当に飲ませていていいのだろうかという疑問も持ち始めていました。
こんな風に激怒して噛みかかってくるのはてんかんや脳の病気というのは考えられないかということも聞きました。
私は、てんかんや脳の病気ならば、それでいいじゃないかと思いました。
分かったうえで麦と一緒に暮らせばいい。
病気にあった治療をしてあげればいい。
むしろ、病気であれば原因がはっきりしていいじゃないか。
病気であってくれ。そんなひどいことを思うようにさえなっていました。
しかし、てんかんかどうかの検査ができる病院は先生が知る限り京都にしかないということでした。
そして、その検査をしたとしても、おそらくてんかんであると思われますという曖昧な答えしか得られないそうです。
どんな病気でもそうですが、絶対こう!この治療法で確実!というのは難しいですね…
「おそらくそう思われる」「おそらく違うであろうと思われる」
そんな曖昧な言葉を聞くために京都に脳波を取りに行っても仕方ない…
検査は諦めました。
先生は色々話を聞いたり麦の様子を見ている限りでは「てんかんではないと思います」とおっしゃいました。
しかし、もしかしたらてんかんの薬を飲ませることで何か良い効果が出るかもしれないということで、今まで飲んでいた薬にプラスしててんかん薬を飲ませることになりました。
私:「効果があるんでしょうか?」
先生:「飲ませて様子を見てみないと何とも言えません。」
私:「もし効いたとして、ずっと飲ませていくものなんでしょうか」
先生:「一生飲ませればいいじゃないですか。それで安全に暮らせるなら」
その薬が効くのかどうかは試してみないとわからない。
攻撃性のある犬達を飼い主が手放してしまって殺処分される、そんなことになるよりは薬を飲ませて安全に一緒に暮らせるならそれでいい。
そういった先生の考えはよくわかります。
感情的になる飼い主に冷静に対処しなければいけないのもよくわかります。
だけど、「一生飲ませればいいじゃないですか」という言葉は私にはずしっと不安がのしかかる言葉でした。
涙をこらえて「はい」というのが精いっぱい…
麦はいった今どれくらい危険な状態なのか、攻撃性のある犬と暮らしている方はどのように接しているのか。
聞きたいことはとめどなく出てきました。
色々と聞く私に、
先生:「噛まれた手を縫って飼い続けてる人もいますからね。」
それはそうなんだけど…
そうならないように改善策を何とか見つけ出したくて通っているのに。
縫うほど噛まれて仕事に支障が出るようになっては人間の生活にも影響してくるし…
先生:「じゃあ手袋をしてください」
こんなのわざわざカウンセリング料を払って聞くアドバイスなのかな…
先生に対してどんどん不信感が募りました。
結局、「薬を飲ませたりするよりも、基本的なトレーニングのプログラムをやることが一番の近道になるかもしれません。」
ということで、薬を飲ませながら週1回、トレーニングに通うことになりました。
何とか前向きに、麦と一緒に暮らせる方法を探りたい、その一心でした。
家からは遠いしつけ教室ということもあり、もしよければお近くのトレーナーを紹介しましょうかと言われたこともありました。
え…
私:「どこでトレーニングを受けても同じなんですか?」
先生:「同じです。だいたいやることは一緒なので。」
先生のことを頼って相談に来ていたのになんだかショックでした。
この頃は薬に対しても「飲ませていていいんだろうか?」という疑問もあったし、先生に対してもかなりの不信感を持っていました。
それでも柴犬が噛む問題行動や攻撃行動について研究をしているという先生を信じてトレーニングもお任せすることにしました。
往復2時間半…
先生にも不信感は伝わっていたと思うので、もしかしたらもう来てくれるなと思ってたかもしれません(笑)
こうして週一でトレーニングに通うこと3回、クレートに入る訓練やリードのつけ方、散歩の連れ出し方、待てやおいでなど色々教えてもらいましたが、3回で行くのを辞めてしまいました。
きっかけはある獣医さんとの出会いです。
「こんなことしてたらいつか麻酔になっちゃうよ」
そんな言葉でした。
てんかんの薬を飲ませて麦の問題行動に変化はありませんでした。
穏やかになるとか落ち着いた精神状態になっているという効果も全く感じませんでした。
しかし、よく水を飲むようになりお漏らしをするという副作用の症状が出てしまいました。
先生に言っても
「様子を見ましょう。」
「飲ませないよりは飲ませた方がいい。」
そんな風に言われるばかり…
麦はおしっこが我慢できなくて申し訳なさそうな顔でお漏らしをする…
なんだか罪悪感でいっぱいでした。
副作用がひどくなってきたのでかかりつけの動物病院に相談に行きました。
そこで言われたのが「麻酔になっちゃうよ」です。
薬物療法からの脱却!!
疑問を感じながらも、てんかん薬を飲ませ続ける毎日。
意味があるんだろうか?
やめてしまおうか…
しかし、もし、ここで薬を飲ませるのをやめれば、今以上に怒りやすく攻撃的になるのではないか、もっとひどい状態になるのではないか。
そんな不安があり止めさせることができませんでした。
先生にもとりあえず飲ませていた方がいいと言われていたし…
この頃は、もう全く先が見えない…どうしたらいいのかわからない状態でした。
麦の様子がいつもと違うと、てんかんの薬のせい!?
と神経質に考え、なんでもかんでも薬のせいではないかと思うようになっていました。
週に1回、トレーニングに通うようになって3週間くらいたったころ、散歩をしていると歩いているときにおしりを気にしたり、座り込んでなめたりということがよくありました。
麦はなんでもかんでも口に入れてしまうので、気づかないうちに何か食べたのかな…?
おしりに何か詰まってるんじゃないか?
いや、やっぱりてんかんの薬のせい!?
心配だったので、とりあえず病院に連れて行きました。
かかりつけの病院は何人も先生がいる大きな病院。
今まで何度も通っていましたが、いい先生ばかりだったので指名はしたことがありませんでした。
しかし、この時、ピリピリして精神的にもまいっていた私は、経験のある先生に診てもらいたいと思い、院長先生を指名して診てもらうことにしました。
院長先生はニコニコして迎えてくれましたが麦は緊張マックス…
診察台に乗せられ看護師さんに抑えられると恥ずかしいくらいにぎゃあぎゃあ鳴きわめいていました。
おしりを気にするんですと症状を話すと、
「肛門が詰まってるのかな?ちょっと絞ってみよう。」
ぎゃああああああん
「ほら、いっぱい出た!!」
「他に気になることはありませんか?」
お漏らしをしたり、散歩に連れて行く直前におしっこが我慢できなくてなっていきなりシャーっともらしたり…
そんな事があるんです。
薬の副作用かもしれないと思い、処方されている薬を持って行ったのでこれまでの経緯を簡単にお話ししました。
攻撃性、問題行動、薬の処方について。
「う~ん…なるほどね。まぁ、動物だからね。ちょっと野性味が強くでちゃったかな(笑)」
明るく話す先生の表情にすこし心が軽くなりました(#^^#)
「フルオキセチン(抗うつ薬)はまだいいけど、てんかんの薬は必要ないんじゃないかな…」
「こんなものを飲ませてたら、いつか麻酔になっちゃうよ」
麻酔…
麦の5年後10年後。
考えていなかったわけではありませんが、今現在、安全に平和に暮らすことが最優先になってしまい、薬を飲ませ続けた先に何があるのか…
どこか考えないようにしていました。
今できること。それで精一杯だったんです。
しかし、先生の「麻酔になっちゃうよ」という言葉は、麦の未来をちゃんと考えるきっかけを作ってくれました。
「僕はあんまりくわしくないんだけど、薬物療法と行動療法は必ず一緒に行うこと」
「特に行動療法(しつけ)に力を入れないと意味がない。行動療法を一生懸命ね。」
行動療法がとにかく大切、薬物療法だけやっても何の意味もない。
この薬は噛む行為を止めさせるものではないし、攻撃性を抑えるものではない。
それを何度も何度も私に言ってくれました。
紙に書いて、グルグルグルグル、行動療法に丸をする。
「これに力を入れるんだよ。」
私は思いました。
麦に薬を飲ませ始めたとき、この先生に出会っていたらな…
薬を飲ませてその効果で穏やかにさせる、そんな一時的なことは何の意味もない。
確かに、薬を処方してもらう時、行動療法によるしつけが必要なこと、それは説明してもらってました。
でも、ちゃんと理解していませんでした。
さらっと聞き流してしまい、そして、薬で穏やかになった麦を見て満足してしまったんです。
全部飼い主の責任ですね。
だけど、今では当たり前だと思えることも、すべてが初めてのことで追い詰められていた時の相談だったので、一度説明を受けただけでは全く頭に入ってこなかったんです。
だって専門家であるトレーナーさんと違って私は攻撃性のある犬に初めて出会ったんです。
その重要性はしっかりはっきり言われないと理解ができないし心に響かないんです。
「てんかんの薬はやめた方がいいんじゃないかな」
医院長先生は何度も言ってくれました。
そして、行動療法(しつけ)に力を入れるということも何度も何度も言ってくれました。
「この子に合うトレーナーさんを見つけてあげてください。」
「この子に時間をかけてくれるトレーナーさんを見つけてあげて。」
そんな先生の言葉に涙が出そうでした。
麦に時間をかけてくれるトレーナーさん。
どうやって探せばいいんだろう…?
「はっきりものを言う人だけど信頼できるトレーナーさんですよ。」
院長先生に病院から近いところで犬の幼稚園をやっているトレーナーさんを紹介していただきました。
この日から、先生の指導のもとすこしづつ薬の量を減らし、もう一度麦と向き合うことを決心しました。
院長先生:「今、1歳3か月か〜、1年3か月はかかると思って頑張ってください!!」
薬物療法をやめてみて思うこと
しつけの際に使われているという薬フルオキセチンを使うようになって一日目で実感した麦の変化。
イライラしているようなしぐさや攻撃的な様子はすぐに消え、噛むこともなくなり穏やかな日々が送れるようになりました。
しかし、やめてみて思うのは、麦の良い部分も一緒に抑え込んでしまっていたということです。
穏やかになるというよりは、いつも薬でぼーっとしていたように思います。
ボールを投げれば持ってきて遊ぶし、家に帰れば喜んで寄ってくる、おやつをあげればうれしそうにしている。
しかし、普段は感情が無くなってしまったようにただただ静かにボーっとしていました。
吠えることもなく…嫌がることもなく…
まだ1歳なのにおとなしすぎますよね…
もともとビビリで内弁慶なところはありましたが、散歩に出かけるとさらに静か…
テンションが上がって興奮することもありませんでした。
犬っていきなりテンション高く走り回ったりしますよね。
吠えたり、喜んだり、嫌がったり、時には怒ったり。
薬を飲ませることで、そんなすべての感情を薬で閉じ込めてしまっっていたように思います。
麦は今でも攻撃的になることがあります。
噛むという問題行動はなかなか改善されません。
しかし、それは、麦の生まれ持ったもので仕方ないところもある。
今、みてもらっているトレーナーさんに言われました。
「この子はこうなんだから、いちいち意味や理由を求めないで」
なんでだろう?どうしてだろう?と理由を求めたり、過去の何がいけなかったのかと考えるばかりでなかなか今の麦を見てあげることができませんでした。
しかし、麦のことを理解して受け止めることで、今はとても暮らしやすくなりました。
もちろん、今まで一緒に暮らしてきた先代犬と同じようにはいきません。
しかし、本気で向き合う大切さを教えてもらってからは、トレーナーさん任せではなく、どうするのが一番いいのかを私自身が考えるようになりました。
他の子が何の抵抗もなくできるようなことでも、麦にとっては一大事!
毎日毎日少しづつ慣らして、トレーニングしてあげることで日々成長してくれていると感じます。
攻撃的な犬。
それはとてつもなく危険だと思います。
柴犬くらいの大きさの子が噛むのは大けがにつながります…
私は、今まで犬に恐怖を感じたことなどありませんでした。
警戒心など全く持たずにどんな子にも手を差し出していました。
しかし、今はそれができません。
麦に噛まれてできた傷やケガは治ったけどその恐怖心や悲しみは消えません。
これは体験してみないとわからないことだと思います。
そんな飼い主に愛犬を手放さず一緒に暮らせる方法としての薬物療法。
「それで安全に暮らせるならいいじゃないですか」
薬物療法で通ったしつけ教室の先生の言葉は、飼い主にとっては冷たい言葉に聞こえましたが、飼育放棄された犬達や殺処分された犬達をたくさん知っているからこその言葉なのかもしれません。
麦と私には薬を使った問題行動のしつけは合いませんでした。
それは、薬物療法をやりながら行動療法に力を入れるということができていなかったのもあるし、薬を飲ませることへの罪悪感や抵抗が消えなかったというのもあります。
そして、何よりも自分の不安な気持ちから、本当にこれでいいのか…大丈夫だろうか…と思いながら指導を受けていました。
私は、新しいトレーナーさんに会いに行ったときに言われました。
「あなたのその態度が何よりだめ」
ダメなことでも飼い主が信じてやり切ればいいことになる場合もある。
いいことだって大丈夫かなと疑ってかかってたらダメになることもある。
「不安な気持ちは必ず犬に伝わるから!飼い主が信じてやりきること!」
ズバズバ指摘するトレーナーさん。
ひるんでしまうこともありますが、はっきり言ってもらえる方が私には合っていたみたいです!(^^)!
「だからダメなの!それじゃダメなの!」
そんな風に厳しく否定されたりもしましたが(汗)
この時、真夏。
汗だくになりながら一生懸命犬との接し方を教えてくれたトレーナーさん。
最初に言われたのはご飯のあげ方と散歩のリーダーウォークでした。
「これを徹底すればきっと変わるから。」と。
あれから半年ほど経ちました。
結果、飼い主も麦も変われました!(^^)!
噛むという問題行動がなくなったわけではありませんが…
一時期は、保健所に連れていかれてもおかしくない、他のご家庭に譲渡することを考えてはどうですか。
いや、この子に譲渡適正はない。
そんな厳しい言葉が出たこともありました。
人を噛んだことで飼育放棄されたり殺処分の対象になる犬は本当に多いようです。
だけど、人間が変わることで犬も変わってくれると思います。
そして、ものすごく危険だと言われた状態から少しづつ関係が改善し、人間の接し方を変えてあげることで一緒に暮らせるようにもなるんです。
犬の問題行動で悩んでいる方がいたら、是非、専門家に相談してみてください。
そして、自分と愛犬に合うアドバイスをしてくれるトレーナーさんや獣医さんを見つけてください。
私も4人のトレーナーさん、動物病院で問題行動専門の先生へのカウンセリング、3か所の獣医さんで相談し、やっと今にたどり着きました。
道のりは長かったけど、どのアドバイスもすべて為になりました。
すべての経験から今の麦との生活ができるようになったのだと思います。
質問です
薬物療法については色々な考え方があると思います。
私自身も初めはものすごく抵抗がありました。
みなさんはどう思われますか?
もしよければご意見聞かせてください。
回答すると他の方の答えが出てきます。
柴犬のしつけに悩んだら読んで欲しい
どんな咬み犬でもしあわせになれる 愛と涙の“ワル犬”再生物語
「噛まれるのは痛いけど怖くない」
ポチパパこと北村紋義さんの本です。
うちの子大したことないのかも…と思えました。犬と向き合う勇気をもらえた一冊です。
COMMENTSコメント
この記事に関するご意見、ご感想などございましたらお気軽にコメントください。
愛犬に関するしつけや対応、考え方など、いろいろと情報共有できると嬉しいです!
※名前はニックネーム程度で構いません。入力しなくてもコメントできます。
こんにちは。うちも噛み犬で突然激しく噛みます。半年前にトリミングサロンで犬を全然にお渡しする際に、私が顔を噛まれました。先生でなくて本当に良かったです。だんだんひどくなり、毎日負傷。トリミングもワクチンも、すごく苦労していて、周囲からは安楽死を薦められていますが、とても無理です。訓練所にも入れました。犬歯も抜きました。それでも噛まれたら血が出るし腫れ上がります。
同じように苦労されていた体験を読ませて頂き、すごく為になりましたし、励まされました。自分と愛犬にあった方法を模索してみます。
どんなことがあっても手放せないですよね。同じ気持ちです。
一時期は不安や恐怖で感情がおかしくなってしまい「なんか涙出る」な毎日でしたが、私も同じような子の飼い主さんの体験がとても励みになっていました。
噛む子との暮らしは経験者じゃないとなかなか分かりませんね…
大変な思いをしながら責任もってしっかり面倒見ている飼い主さんは本当に素晴らしいです。
自分たちにあった暮らし方がきっと見つかると思います!